RAGとDB検索AIが実現するナレッジ共有の新時代|製造メーカーにおける導入後の活用イメージ

コラム

製造メーカーの現場において、修理記録や補修パーツ、マニュアルを探す作業は日常的に行われています。しかし、膨大なデータがサーバーに保管されていても、必要な情報を探し出すには時間と労力がかかることが少なくありません。また、情報が特定の担当者しか知らない「属人化」が起こったり、社内に散在したりする場合には、効率がさらに低下します。

このような課題を解決するために注目されているのが、独自情報を活用するRAG(検索拡張生成)や、データベース内の情報を効率よく検索できるDB検索AIシステムです。本記事では、RAG型チャットボットとDB検索AIがどのように製造現場の効率化に寄与するのか、その具体的な活用シーンとメリットについて解説していきます。

製造メーカーが抱えるナレッジ共有に関する問題点

製造メーカーの現場では、日々の業務において多くの情報を共有し活用する必要があります。しかし、以下の3つの問題点がナレッジ共有を妨げ、作業効率に大きな影響を及ぼしています。

1. 情報のサイロ化と検索性の低さ

これは、過去の修理データやパーツ情報、修理マニュアルが膨大なデータの中に埋もれて見つけにくいため、不具合・故障対応が長期化してしまうという問題点です。

過去の修理データが検索しにくい

「修理時に過去の修理事例を参考にしたいが、適切な事例を検索しにくい、」

チャットボットは、過去の修理データを一元管理し、自然言語で検索できるようにします。「エアコンから水漏れする」といった日常会話のような言葉で質問するだけで、AIが関連性の高い過去の事例を瞬時に探し出し、回答します。

補修パーツの情報が検索しにくい

「補修パーツの数が膨大で型番もわかりにくく、パーツ情報の絞り込みが難しいため、必要なパーツの検索に手間がかかる。」

補修パーツは種類が膨大で、型番も複雑です。必要なパーツを探すためには、カタログを何冊もめくったり、複雑なデータベースを操作したりと、多くの手間と時間がかかります。これは、現場の作業効率を大きく低下させる要因です。

チャットボットは、製品とパーツの情報を紐付け、対話形式で絞り込みをサポートします。「〇〇モデルのバッテリー」のように質問すると、チャットボットが該当するパーツのリストを表示します。これにより、探す手間が大幅に削減され、正確なパーツの手配が可能になります。

最新のマニュアルが見つけにくい

「修理の対象となる製品やパーツは日々増えていくため、最新の修理マニュアルや該当するマニュアルが見つけにくく、検索や絞り込みに時間がかかる。」

製品やパーツは常に更新されるため、修理マニュアルも頻繁に改訂されます。しかし、紙のマニュアルや整理されていないデータでは、最新版がどれか分からなくなり、古い情報で作業を進めてしまうリスクがあります。

チャットボットは、常に最新のマニュアルデータと連携しています。ユーザーが製品名や不具合内容を尋ねると、AIが最新のマニュアル情報を自動的に参照し、正確な手順を提示します。これにより、常に最新かつ正確な情報に基づいて作業を行うことができ、ミスの発生を防ぎます。

2. 技術やノウハウの属人化と伝承の停滞

製造メーカーの現場や技術部門などでは、ベテラン社員が持つ技術やノウハウが属人化し、暗黙知のままで形式知に変換されていないケースが多く見られます。このような状況が常態化すると、若手社員や新入社員への技術伝承がスムーズに進まず、組織全体の生産性や効率に影響を与えることになります。

属人化された知識を組織資産へ

多くの企業で、過去の修理データは紙の台帳や個人のPCに保存され、熟練技術者が持つ貴重な知識が個人の頭の中に留まり、共有されないままです。特定のベテラン社員しかアクセスできない「属人化」した状態にあります。これにより、経験の浅い社員が過去の事例を参考にしたいと思っても、適切な情報を見つけられず、問題解決に時間がかかってしまいます。これは「知識のサイロ化」と呼ばれ、技術継承を妨げ、若手社員の育成を困難にしています。チャットボットは、これらの知識を形式知化し、誰もがアクセスできる中央データベースに集約します。これにより、経験の浅い社員でも、まるでベテランに相談するように過去の事例やノウハウを即座に参照でき、自己解決能力を高めることができます。

検索から「問いかけ」へ、劇的な時間の短縮

従来の修理・メンテナンス業務では、必要な情報を探すために、膨大なファイルやデータベースを一つひとつ手動で検索する必要がありました。これは非効率的で、貴重な時間を無駄にしてしまいます。チャットボットは、自然言語処理を駆使することで、このプロセスを根本から変えます。「〇〇モデルのバッテリー交換手順は?」といった簡単な問いかけをするだけで、AIが最適な情報を瞬時に提示します。これにより、情報検索にかかる時間を大幅に短縮し、本来の業務である修理作業に集中できるようになります。

複雑なタスクの効率化とミスの削減

修理現場では、製品の特定からパーツの選択、手順の確認まで、多岐にわたる複雑なタスクが求められます。特に、多種多様な製品を扱う場合、これらのタスクはより困難になります。チャットボットは、これらの複雑なプロセスを対話形式でガイドし、作業者の負担を軽減します。

チャットボットは、修理・メンテナンス業務における「情報の壁」を取り払い、誰もが知識と情報にスムーズにアクセスできる環境を構築します。これは、単なる効率化を超え、企業全体の技術力向上と競争力強化に直結する変革と言えるでしょう。

3. 製品関連情報取得の非効率性

製品数が多い製造メーカーでは、製品に関する情報の取得に手間と時間がかかることが課題となっています。設計資料や技術データが社内の複数の場所に分散している場合、必要な情報を迅速に見つけることが難しく、業務効率が低下します。

最新のAI技術がナレッジ共有をどう変えるか

上記のような問題を解決するには、RAGやAIを活用したDB検索AIシステムの導入が有効となります。特に、データベースに格納されている製品関連の情報取得や修理パーツの検索には、データベース検索に特化したAIシステムが最適です。

RAG(検索拡張生成)とは

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、「検索」と「生成」を組み合わせた技術です。社内のドキュメントなどを元にしたデータベースから欲しい情報を検索し、その中から関連性の高い情報を選択して、生成AIによって回答を生成するという「検索→選択→生成」のプロセスを経て回答を作ります。

この手法により、LLM(大規模言語モデル)単独では不可能な企業独自の情報や、最新情報を取り扱うことが可能となります。また、AIが誤った情報を生成するハルシネーションのリスクを低減するため、回答の根拠となる情報源(ソースドキュメント)を提示する機能が多くのRAGシステムに搭載されています。これにより、ユーザーは回答のファクトチェックを容易に行うことができます。

DB検索AIシステムとは

DB検索AIシステムとは、商品や修理パーツなど、構造化されたデータベースから必要な情報を迅速に抽出する高度な検索システムです。このシステムは、検索作業にかかる時間を大幅に削減し、業務の効率化や人的エラーの防止において非常に役立ちます。

おすすめの製品・機能

ここからは、株式会社イクシーズラボが提供する2つの製品をご紹介します。

過去の修理事例やマニュアルなど、非構造化データの検索に適しているのは、RAG機能を搭載したチャットボット「CAIWA Service Viii」です。一方、製品データやパーツ情報といった表形式の構造化データから欲しい情報を絞り込むのに最適なのは、AIチャットボット型DB検索AI「CAIWA Service CoReDA」です。

RAGを活用したチャットボット「CAIWA Service Viii」

このサービスは、OpenAI社のChatGPT APIと独自開発のAIエンジン「CAIWA」を組み合わせることで、企業内の多様な情報を効率的に活用し、業務効率の向上を支援します。本製品はRAGにより各種ドキュメントから正しい情報を取得し、元ファイルも表示されるため資料探しの用途にも活用できます。

CAIWA Service Viiiは、主に「ChatGPT応答機能」と「Q&A自動生成機能」を提供します。

  • ChatGPT応答機能:CAIWA Service ViiiのRAGは、CAIWA(独自開発AI)とChatGPT(生成AI)の回答をチャット画面上で比較できます。この機能は誤情報を提示するリスクがないCAIWAと、広範な対応ができるChatGPTの利点を合わせ、いわば両方の「いいとこどり」を実現した機能です。また、チャットボットの回答から生成元ファイルを確認することもできるため、回答のファクトチェックも容易に行えます。
  • Q&A自動生成機能:本製品には、アップロードした社内資料などのドキュメントファイルから、FAQとして活用できる質問と回答を自動で抽出し、生成する機能があります。これにより、FAQ作成の手間を大幅に削減できます。

AIチャットボット型DB検索AIシステム「CAIWA Service CoReDA」

CAIWA Service CoReDAは、表形式のデータベースを活用し、対話形式で情報を取得できるチャットボット型DB検索AIシステムです。AIを活用した高度な検索機能を備えており、商品データベースやパーツ関連のデータベースから正確かつ迅速に必要な情報を得ることが可能です。

  • 情報の絞り込み(スロットフィル): ユーザーが必要な情報を対話形式で簡単に絞り込める機能です。ユーザーとのやり取りを通じて「スロット」と呼ばれる情報項目を埋める(フィル)ことで、必要な情報を効率的に特定します。
  • 情報深掘り(ターゲットディグ): 特定の対象(ターゲット)について、対話を重ねて詳しく掘り下げる(ディグ)機能です。一度調べたい対象を指定すれば、その後は対象名を繰り返し入力する必要がなく、スムーズに疑問点を掘り下げることができます。
  • サジェスト(入力補助): 質問を2文字以上入力すると、その文字を含む文字列の候補が表示されます。表記の揺れを防止し、入力の手間も省く機能です。
CAIWA Service CoReDA活用イメージ

導入後の効果

CAIWA Service ViiiおよびCAIWA Service CoReDAの導入後には、以下のような効果が期待できます。

保守・品質管理の向上

検索効率の向上により、迅速な修理対応が可能となり、修理時間の短縮につながります。また、統一された情報を共有できるため、品質のばらつきを抑えられます。

イノベーションの促進

製造部門だけでなく、営業部門やカスタマーサポート部門とも顧客からのフィードバックや市場動向に関する情報を共有できるため、新製品や新機能のアイデア創出につながります。

技術伝承の促進と属人化の解消

情報を一元化し共有することで、ベテランや限られた人しか持っていなかった技術やノウハウを部門全体で活用できます。これにより、ベテランの退職や主要メンバーの休暇による影響を最小限に抑える効果もあります。

製品関連情報の取得効率改善

AIチャットボットを活用すれば、最新の製品情報を素早く、効率的に取得できるようになります。多種多様な製品の仕様や互換性などの詳細情報も、情報の一元化により正確なものが提供されます。

このように、チャットボットは単なる問い合わせ対応ツールではなく、修理・メンテナンス業務における情報のハブとなり、現場の生産性と精度を劇的に向上させる強力なソリューションと言えます。

まとめ

製造メーカーが直面する情報検索の非効率性や技術の属人化は、組織全体の生産性を阻害する大きな課題です。膨大な修理データやパーツ情報、最新のマニュアルを迅速に活用するには、最新のAIソリューションが不可欠です。

特に、独自情報を活用できるRAG(検索拡張生成)は、正確で効率的なナレッジ共有を実現します。また、データベース内の情報を対話形式で検索できるDB検索AIは、複雑なデータから必要な情報を瞬時に引き出すことを可能にします。

これらのAIチャットボットを導入することで、情報共有が促進され、技術伝承がスムーズに進みます。結果として、製造現場の効率化と品質向上が実現し、企業の競争力強化につながることでしょう。

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AIチャットボットCAIWA Service Viii

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Viiiは、導入実績が豊富で高性能なAIチャットボットです。学習済み言語モデル搭載で、ゼロからの学習が必要ないため、短期間で導入できます。導入会社様からは回答精度が高くメンテナンスがしやすいと高い評価をいただいています。

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イクシーズラボが提供する次世代のAIチャット型検索システム

CAIWA Service CoReDA

DB検索AI CAIWA Service CoReDA

CoReDAは、AIを活用した高度な検索機能により容易に目的の情報を得ることができるチャット型の情報検索システムです。データを取り込み基本設定をするだけで、絞り込み検索シナリオやQ&Aを手間なく作成できるのが特徴です。

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